仏は4種類
- 如来……真の悟りを開いた仏
- 菩薩……如来になるために修行中の仏
- 明王……教えに背く者を激しく説き伏せる
- 天部……ボデーガード・スペシャリスト
寺に行けば奥から偉い順に
「如来像、菩薩像、明王像、天部像」
の順に配置されている。
如来は人々に説法をするため坐像が多く、
その他は自ら出向いて救うために立像が多い。
もっとも目にする機会が多いのは観音菩薩と
地蔵菩薩であり、それには理由がある。
表情
如来や菩薩は「半眼」といって
開いてもなく、閉じてもいない表情である。
いわゆる薄目の状態であるが、
半分は外界を、半分は内面を見ている。
明王や天部は目を見開いている。
如来
釈迦如来・阿弥陀如来・大日如来・薬師如来が
よく知られている。
鎌倉大仏は阿弥陀如来であり、
奈良大仏は大日如来の前身である。
その他
- 菩薩……観音様・お地蔵さんなど
- 明王……不動明王など
- 天部……七福神など
では、詳しくみていこう。
①如来とは?
如来(にょらい)とは「真実を悟った者」であり、
4種類ある仏の中で最高位とされる。
「仏陀(ブッダ)」とも呼ばれる。
粗末な格好
出家した後なので一枚の布しか身に着けず、
原則としてモノを持たず、装飾品も身に着けない。
(菩薩は出家前なので派手な格好をしている)
ただし、大日如来だけは別格の存在なので
きらびやかな格好をしている。
髪型
パンチパーマ……ではなく螺髪(らほつ)と呼ぶ。
螺(ら)は巻貝のことで、右巻きで固めてあり
中央が盛り上がって二段になっている。
このヘアスタイルが許されるのは如来だけであり、
髪型を見れば如来かそれ以外か、の区別がつく。
額の点は何?
白毫(びゃくごう)と呼ばれる。
おできのようにも見えるが、毛の塊である。
眉間の上に生える白い毛が4.5m伸びて、
右巻きに渦を巻いて貼り付けたもの。
ここから光明を放つらしい。
悟りを開いた証しとされ、如来と、
一部の菩薩についている。
釈迦如来
他の仏が架空の存在であるのに対し、
釈迦如来だけはネパール王国シャーキア族の
ゴータマ・シッダルタ王子という実在の人物である。
説法がメイン
阿弥陀如来は死後の世界を司る、
大日如来は死者を死後の世界に導く、
薬師如来は病から救う……といった役目はあるが、
釈迦如来には特別な役目がない。
人間から如来になった唯一の存在なので
特殊能力がない、いうことか。
釈迦三尊像
「釈迦三尊像」といって、
両脇に菩薩などを置いたスタイルが多い。
釈迦が座って説法をし、菩薩が立って自ら
救済に赴いているスタイルである。
曹洞宗、臨済宗、日蓮宗など、
座禅メインの宗派が主に信仰する。
ゴータマ・シッダルタ
- 16歳 結婚
- 29歳 出家
- 35歳 悟りを開く
- 80歳 死去
お釈迦様はネパール人である。
仏陀(ブッダ)
ゴータマ・シッダルタという実在の人物である。
名前の由来はゴータマ(最も優れた牛)、
シッダルタ(すべてが成就した)の意である。
ネパールのルンビニという村で産まれた。
釈迦(シャーキヤ)族の王子であり、
悟りに目覚め、ブッダ(目覚めた人)となった。
出家
何不自由のない生活をしていたものの、
人生の無常や生・老・病・死(四苦)に悩み、
29歳で家族を捨てて修行僧となる。
悟り(35歳)
6年間苦行をしたが悟りを得ることができず……
心身ともに衰弱しきったところを
スジャーターという娘からミルク粥を差し出される。
それで命を救われ瞑想したところ、悟りを得た。
諸国へ
それから45年間、諸国を説法して回る間に
各国の王族が次々と仏教に改宗した。
それが形を変えつつ、日本にまで広がった。
80歳で亡くなると火葬され、8カ所に分骨された。
日本では東本願寺に遺骨があるらしい……が、
仏教圏の施設で遺骨と主張される骨があまりに多く、
どれが本物かはわからない。
阿弥陀如来
阿弥陀如来といえば「極楽浄土」である。
アミターバ(計り知れない光を持つ者)を
漢訳して阿弥陀となった。
極楽浄土
浄土真宗など念仏メインの宗派が進行する仏であり、
苦しむ人々を極楽浄土に連れて行ってくれる。
そこでは苦しみが全くないとされ、
衣食住に困らず、暑くも寒くもない。
黄金の大地は金銀財宝で埋め尽くされ、
心地よい音楽が流れている。
ただし、
酒池肉林のような強欲を満たす場ではない。
天国との違い
英語にすればキリスト教の天国はHeavenである。
仏教でいう「あの世」はAnother worldであり、
あの世の中に極楽浄土(West land)がある。
Heavenは神や天使が住む場所であり、
死後の人間が行きつく場所ではない。
天国では神々の強欲も争いもあり、
人々が平和に暮らす極楽浄土とは異なる。
西の如来
極楽浄土は西方にある、とされる。
とはいえ鎌倉以降の関東では念仏が流行ったので
関東地方は阿弥陀如来がメインである。
鎌倉大仏
阿弥陀如来の仏像では鎌倉大仏が代表的である。
牛久大仏(120m)も阿弥陀仏ではあるが、
歴史的価値の薄い単なる観光施設なので
「文化財」「日本一」などの考察に入らない。
一向一揆
なぜ一向一揆の信者は狂信的だったのか?
それは浄土宗の教えによるものだ。
誰でも「南無阿弥陀仏」と唱えるだけで
阿弥陀如来が極楽浄土に連れて行ってくれる。
その手軽さが、熱狂的かつ大量の信者を生んだ。
大日如来
太陽の化身であり、仏の中でNo.1の存在である。
すべては大日(=太陽)から産まれたとされ
西洋における創造主のような存在である。
大日如来といえば「空海(弘法大師)」である。
仏のトップ
大日如来は仏の中の頂点なので、
出家者でなく王様の姿で現される。
髪型も普通で、豪華な装飾を身に着けている。
空海(弘法大師)
真言宗の開祖であり、密教ブームの先駆けといえる。
真言を唱えることで大日如来と一体化し、
真の悟りを開こうとした僧侶である。
空海が貴族たちに密教を広めたので、
京都では大日如来がメインである。
富士山の本尊
富士信仰では大日如来を本尊としている。
富士山開山の祖が山頂に大日寺を建て、
噴火への危惧などから信仰が拡大したという。
薬師・びるしゃな
他にも多数の如来はあるが、
ここでは代表的な2つを紹介する。
薬師如来
薬師如来といえば「病気の回復」だが、
他にも災いを消し去ったりする御利益がある。
左手に薬壺を持っているのですぐにわかる。
現世利益を司る珍しい如来であるため、
極楽浄土を約束する阿弥陀如来と双璧の人気度。
阿弥陀・薬師如来は御利益がわかりやすいため、
大日如来や釈迦如来よりも信仰されてきた。
おいおい……
徳川家康
徳川家康は、母が薬師如来に祈願して誕生した。
東照大権現(=徳川家康)は
薬師如来がこの世に現れた姿、との解釈もある。
毘盧舎那(びるしゃな)如来
奈良の大仏であり、日本に仏教を根づかせるために、
当時の国家予算1年分を注ぎ込んで作った。
伝染病(天然痘)や争い、災害……
奈良時代は何をやってもうまくいかなかった時代だ。
神頼みならぬ、仏頼みだったのである。
大日如来の前身
全ての仏・菩薩の祖Mahāvairocanaを
マハーヴァイローチャナ⇒摩訶毘盧遮那と音訳した。
「まかびるしゃな」を漢訳したのが大日如来である。
つまり、奈良の大仏(びるしゃな)が進化すると
大日如来(まかびるしゃな)になる。
②菩薩とは?
如来を目指して修行中の身でありながら
人々を救おうとする存在である。
高度な悟りに達しており仏陀に近いものの、
些細な煩悩が残っており仏陀ではない存在である。
中心が如来の坐像、両脇に菩薩の立像を配置する
「三尊像」は寺の本堂でよく目にする。
文殊・弥勒・勢至・虚空蔵・観音・地蔵……etc.
多数あるが、ここでは代表的な2つを紹介する。
如来との見分け方
如来は布一枚の地味な格好だが、
菩薩は修行中の釈迦(貴族)をモデルにしており、
装飾品を身に着け「派手な格好」をしている。
※地蔵菩薩だけは地味
多くの顔や手を持った超人的な姿もある。
観音菩薩
音に通じ、救いを求める人々の声を聞き逃さず、
何が何でも救い出してくれる……
「カンノン様」は超ありがたい仏様なのである。
正しくは「観世音菩薩」と書く。
人気No.1
本来なら如来になれるにもかかわらず、
人間を憐れみ、「直接」救うために現世に残った。
そのため、古くから民衆に慕われており、
如来を差し置き観音菩薩を本尊とする寺院は多い。
たとえば四国88ヶ所の本尊は
薬師如来24・阿弥陀如来10・大日如来6
釈迦如来5・観音菩薩30、その他5である。
地蔵菩薩
子供を守るのが地蔵菩薩である。
子供と同様、坊主頭で幼い顔をしており、
左手に数珠・右手に杖を持っている。
昔は7歳になるまで名前をつけないほど、
乳幼児の死亡率は高かった。
子供が親より先に死ぬことは親不孝であるので
あの世で鬼にイジメられる。
そこでも地蔵菩薩が子供を守ってくれる。
地蔵菩薩は子供の守護だけあり、寺だけでなく
町や山、池や川のほとりなど至る所にお像がある。
明王
多数あるが、ここでは「不動明王」を紹介する。
如来の化身
教えに従わない迷える者を、正しい道に導く。
様々な人間がいるけれども、どんな人間も救済する……
そんな強い意志と慈悲の心が表情に現れている。
憤怒の表情
優しさだけですべての人は導けない。
相手のことを想って「怒り」によって救済する。
そのために如来が変化して現れた姿が、
明王なのである。
慈悲の目も
片方の目を閉じている明王もいる。
これは「多少のことは目をつぶる」ことを示す。
明王はウォームハートだが、クールヘッドなのだ。
天部
四天王・七福神・十二神将や
龍、金剛力士、帝釈天、夜叉、阿修羅、羅刹…etc.
数が多いのでよく知られた一部を示す。
キャラが豊富
ゲームや漫画によく登場する個性派キャラが揃う。
金剛力士(仁王)
寺の入り口に仏敵の侵入を防ぐために
阿吽(あ・うん)の一対で配置されることが多い。
阿形像は怒りを外に、吽形像は内に秘めた表情。
明王も仁王も怒っているが、その対象が異なる。
明王は人々に対して、仁王は仏敵に対してである。
ヒンドゥー教の神様たち
大自在天=シヴァ神、帝釈天=インドラ神のように
天部はヒンドゥー教の神様を取り入れた存在である。
人々を護衛をするので武装していることが多い。
女性・動物
女性や動物は如来・菩薩・明王にいないので、
これらの像は天部所属だと一発でわかる。
まとめ
仏の中で「直接」救ってくれるのが観音様であり、
拝みたくなる存在なので置いてある寺が多い。
子どもを守る願いでそこら中に置いてあるのが
地蔵菩薩の石像(お地蔵さん)である。
そのため、
観音様とお地蔵様……最上位でないにもかかわらず
この2つを目にすることが最も多い。
天部の仏たちは特別なチカラを持つものの、
まだ煩悩が残っており位が低いとされる。
しかし、インドで最高レベルの神々を発展途上とか
日本の仏の子分扱いしていいんだろうか……