原子力発電の仕組みは「原始的」である。
水を沸騰させて、水蒸気でプロペラを回すだけ。
しかし、
人類には早すぎる技術と言わざるを得ない。
なぜなら、
10万年先まで核廃棄物を管理しなくては
ならないからだ(後述)。
そもそも管理がどうのこうの以前に、
現在はその保管場所すら、決まっていない……
概要
(http://www.energia.co.jp/atom/more2.htmlより引用)
蒸気機関車や火力発電と同じ原理だ。
核分裂の熱エネルギーで高圧の水蒸気をつくり、
タービン(プロペラみたいの)を
高速回転させて発電させる。
火力発電のボイラーを原子炉に
パワーアップしたイメージであり、
約50年前から行われている。
核分裂反応
(https://kotobank.jp/word/より引用)
核燃料であるウラン235に中性子が1つ衝突すると、
「核分裂生成物+熱エネルギー+中性子2つ」ができる。
中性子が1⇒2に増える点が重要である。
増えた中性子はまた他のウラン235に衝突する。
つまり、一度核分裂反応が起こると、
ネズミ算的に核分裂の連鎖反応が起こり、
莫大な熱エネルギーが発生する。
一度始まった反応は、もう止まらない。
(止める技術は存在しない)
原子炉
中性子をコントロールしながらウランを燃やす、
この装置を原子炉と呼ぶ。
3000トンの水が入ったプールの中に
燃料棒(ウラン235)、制御棒(中性子を出し入れする)が
設置されている。
仕組みは同じ
(https://kids.gakken.co.jp/jiyuu/category/research/japanese_sl/より引用)
蒸気機関車の仕組みは、
①水を熱して、
②水蒸気を発生させて、
③蒸気圧で車輪を回す。
蒸気機関車も火力発電も原子力発電も、
基本的な仕組みは同じ。
蒸気圧
水が水蒸気になると、
体積は1240倍になる。
2Lのペットボトルの水が、
風呂10杯分に膨れ上がる。
風呂10杯分の水蒸気を
頑丈な2Lの容器に閉じ込めたら
ものすごい反発力が産まれる。
そのチカラを使って、
タービン(プロペラみたいの)を回して発電する。
原子力発電では300℃で100気圧以上の
水蒸気が得られる。
熱効率
火力発電の熱効率45%だが、
原子力発電の熱効率は30%に過ぎない。
原子力発電を「熱効率が良い」と
カン違いしている人はとても多いが、
蒸気利用方式で最も発電効率が悪い。
原子力発電は効率こそ悪いのだが、
石油を燃やすのとウラン核分裂では
発生する熱量がケタ違いである。
膨大な無駄があっても、
膨大な電力を得られるのでOKという理屈だ。
ウラン
天然のウラン鉱石には、
ウラン238 (99.28%)、ウラン235 (0.71%)、
ウラン234 (0.0054%)が混ざっている。
このうち、
核燃料になるのはウラン235 (0.71%)である。
ウラン235
(Wikimedia Commonsより引用)
天然のウラン鉱石。
(Wikimedia Commonsより引用)
精錬し、ウランだけにする。(イエローケーキ)
イエローケーキを遠心分離し、
ウラン235の濃度を5%にまで高めると
核燃料となる。
(90%以上に高めると核爆弾になる)
燃料が違う
火力発電は石油・石炭を燃やす。
その熱で水蒸気を得る。
燃料が無くなれば勝手に冷えていくので
放っておいても危険は少ない。
原子力発電は核燃料(ウラン)を燃やす。
核分裂によって生じる熱で水蒸気を得る。
燃料が無くなっても熱くなり続け、
放っておくと原子炉まで溶かしてしまう。
放置は厳禁だ。
核燃料
(Wikimedia Commonsより引用)
原始炉1基に数百本の燃料棒がセットされている。
燃料棒1本にヒロシマ原爆1個分くらいの
放射性物質が含まれている。
さらに近くには、
多数の使用済み核廃棄物が保管されている。
54基
(https://www.itmedia.co.jp/より引用)
日本には現在、54基の原子炉がある。
ざっくりいうと、
原子爆弾10000発くらいの核物質がある。
日本の原子力発電所は、
北朝鮮や韓国のミサイルの射程距離である。
もし爆撃されてバラ撒かれたら……
原子爆弾との違い
核兵器(原子爆弾)は少量で高濃度(90%以上)、
原子力発電は大量で低濃度(5%程度)の核燃料を使う。
濃度の違いにより、
原子爆弾は一瞬で大爆発するが、
原子力発電は爆発せず徐々に熱くなる。
原子力発電はウラン235が4%の濃度であり、
96%は核分裂しにくいウラン238である。
それを、
3~4年かけてゆっくり核分裂させる。
また制御棒で中性子をコントロールするので
爆発を止めたり、制御できる……
いや、できるはずであった。
メルトダウン(炉心溶融)
メルトダウンは原子力発電における、
最悪の事故である。
チェルノブイリでは「象の足」と呼ばれる
巨大な塊が莫大な放射線を放っていた。
近づけば、即死。
離れていても30秒以内で致死量に達する……
コレを撮影した人物はもちろん、
作業に携わった者は、
「全員」が1年以内に死亡した。
フクシマでは1~3号機がメルトダウンを起こし、
核分裂の制御が効かなくなって大爆発してしまった。
作業員の日給は1日15分で日給40万円だったらしい。
冷却材でもあるプールの水がなくなるとどうなるか?
燃料棒が加熱し、溶けてしまう。
その影響で原子炉が破損し、
放射性物質が周囲にブチ撒かれてしまう。
その最悪なケースを防ぐために
原子炉は多重構造となっている。
しかし、
津波でプールも多重構造も壊れてしまった。
メリットとデメリット
原子力発電のメリット・デメリットは
火力発電との比較になる。
水力発電はメリット・デメリットが
原子力発電と類似しており、
風力・太陽光・地熱その他は
発電量が小さすぎて比較対象にならないからだ。
メリット
〇膨大な電力を安定供給
〇少ない燃料で膨大な電力発生
○自然環境に優しい(爆発しなければ)
○温暖化への影響が火力の1/10以下
○石油より安定供給しやすい
○技術進歩によるコスト削減・安全性向上
○交付金により原発のある自治体が潤う
〇ウランは海水から取れれば無尽蔵
〇常に補給しなくても発電可能
〇酸素が不要
〇二酸化炭素を出さない
〇石油のように政情不安でない
〇燃料備蓄に場所をとらない
〇火力発電だけに頼らなくて済む
〇石油より価格が安定している
〇いつでも核武装できる
○コストが安い?
大電力の安定供給
大電力を安定供給でき、
海水からウランを採れれば、
資源弱小国日本の救世主になる。
また関連団体数が異様に多く、
天下り先を多数用意できる点や
堂々と核原料を大量保有できるので、
いつでも核兵器を作れる点も魅力だ。
デメリット
×核廃棄物の処理に10万年
×建設費が「超」高い
×MOX燃料は「超」高い
×制御する技術が存在しない
×発電コストは安くない
×熱効率が悪い
×イメージが悪い
×大事故は人類で解決不可能
×地震・津波で爆発
×軍事転用されやすい
×停止するだけで数十日かかる
×作業員の被爆リスク
×住民の被爆リスク
×作業・手続きが「超」複雑
×戦争時に攻撃目標にされる
最大の問題は「廃棄物」である。(後述)
事故と廃棄物
核爆発の事故と核廃棄物の10万年管理は
人間の手に負えるレベルではない。
しかし、
どうせ大地震や大津波なんて、
めったに来ない。
戦争だってめったに起こらない。
自分が生きてる間は大丈夫!
10万年先まで管理と言っても、
自分が死んだ後のことなんて
知ったことではないのでOK!
それも、1つの考え方ではある。
実際、現代社会はその考え方で動いている。
主なメリット
最も大きなメリットは、
安定した大電力である。
安定供給
主要なウラン輸出国は
カザフスタン・カナダ・オーストラリアなど。
石油輸出国(中東諸国)よりも
政情が安定しており、
日本との関係も良好である。
将来、人口爆発により2050年には、
現在の2倍のエネルギー消費となるらしい。
そうなると、
石油は枯渇などで価格が暴騰する恐れがある。
その点、
ウランは価格も安定している。
海水から採れるようになれば、
ほぼ無限で無料だ。
コストが安い?
原子力発電は火力発電に比べて
建設コストは2倍、燃料費は1/5くらい。
原子力は、その経済性が強調される。
しかし、
事故補償・廃炉・廃棄物保管などのコストは、
電力会社の帳簿に考慮されていない。
それらを含めると、
火力発電を超えるらしい。
主なデメリット
主なデメリットは、
事故と核廃棄物の保管だ。
世界中の原子力発電所で事故も災害もなく、
10万年管理することができるだろうか?
トイレなきマンション
現代の科学では、
放射性廃棄物(ウンコ)の無害化は不可能……
にもかかわらず、
原子力発電所はウンコを出し続けるので
溜まり続けている。
そもそも処理方法どころが、
置き場所すら決まっていない。
(みんながイヤがっているので)
青森県「最終処分場は絶対に作らせない」
核廃棄物
10万年の管理方法の確立や
廃棄保管場所も決まっていない現状では、
メリット・デメリット以前に、
スタートすらしてはいけなかった。
廃棄物問題をクリアできない現代人には、
まだ早すぎる科学技術なのである。
地震・津波
原子力発電所は大量に水を使うので
海沿いにしか造れない。
ゆえに、
大津波を完全に避けるのは不可能。
火力発電との違い
発電力には大差がない。
原子力のイメージで強大な発電力がありそうだが、
火力発電の方が発電力が弱いということはない。
全世界の70%は火力発電で作られる。
日本でも75%くらいは火力発電している。
もっとも大きな違いは、
停止させた後の状態だ。
停止させると……
火力発電は「車」。
スイッチを切ると、エンジンもストップする。
車は動かなくなるだけ。
原子力発電は「飛行機」。
スイッチを切ると、エンジンはストップする。
しかし、飛行機は飛び続ける。
コントロールを失えば、墜落⇒大爆発となる。
「停止」「廃炉」の違い
原始炉の「停止」は空中でスイッチを切り、
コントロールしている状態である。
着陸が「廃炉」に相当する。
つまり、
廃炉するまでコントロールし続けないといけない。
停止中も危険
原始炉は停止して放置できるものではない。
停止状態でも運転中でも、同じくらい危険である。
制御棒や水の冷却によって
核分裂の連鎖反応が暴走しないように
365日24時間調節し続けないといけない。
廃炉費用
原子力発電はプルトニウム処理まで含めれば
10万年かかるので測定不能……
1兆円くらい?
火力発電はスイッチを切って
解体するだけなので100億円程度。
廃炉費用や10万年分の核廃棄物処理コストを考えたら、
原子力発電は莫大なコストがかかるといえる。
未来のコストを払うのは現代人ではないので
「知ったことではない」という意見もアリだとは思うが。
崩壊熱
稼働停止により核反応は停止するが、
高温の崩壊熱は発生し続ける。
いっぽう原始炉解体の技術は、
現代の地球には存在しない。
じつは、
未来の技術革新に丸投げ状態なのである。
つまり一度核反応を起こしたら、
もう後戻りはできないのである。
未来の地球がずっと平和で
発展し続けているとは限らない。
むしろ北斗の拳状態のような気がする。
二酸化炭素
火力発電は大量の二酸化炭素が出るので、
地球温暖化に影響があるといわれる。
が、廃棄物は素手で触っても問題ない。
原子力発電は二酸化炭素の問題はないが、
最高レベルの核廃棄物は、
触る以前に近づいただけで死ぬ。
原始炉だけでもやっかいなのに、
核廃棄物の方がさらにやっかいである。
廃炉で最も重要なのは、
「廃棄物をどうするか?」だ。
夢物語(高速増殖炉もんじゅ)
核廃棄物から核燃料が得られる、
という理屈である。
しかも、連鎖反応で廃棄物が
変化し燃料となりどんどん増えていく。
と同時に、
廃棄物がどんどん減っていく。
使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、
核燃料として再使用できる夢のような装置だ。
夢のような装置は、夢で終わった……
核廃棄物問題もクリア
管理に10万年かかる大量の核廃棄物から、
現在よりはるかに多い核燃料を得られ、
生じる核廃棄物は極少量に減る。
しかも、
高速蔵相炉で生じた核廃棄物は
たったの300年で無害化できる。
希望が、絶望に
夢の原子炉は、
2兆4000億円かけて建設された。
しかし、
試運転の段階でポンコツになった。
なぜか?
高速中性子
中性子を「高速で」当てないと、
プルトニウムにならない。
250倍のスピードなのでコントロールが難しく、
暴走しやすく、手がつけられなくなる。
(実際、手がつけられなくなった)
中性子のスピードが落ちるので、
水で冷却することはできない。
ナトリウムで冷却しなくてはならない。
ナトリウム
(Wikimedia Commonsより引用)
ナトリウムは非常に危険な物質である。
水に落としただけで爆発する。
そのうえ、
空気中の酸素や水分とも容易に反応する。
取り扱いが非常に難しい。
そんなナトリウムを98℃に熱して
水銀のように液状化して500℃の冷却に使う。
402℃の温度差で熱を奪うわけだ。
聞いただけで、危険だとわかるだろう。
実際、コレで失敗した。
配管
(https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_03-01-02-02.htmlより引用)
500℃で運転しないとならないため、
熱によって配管が変形しやすい。
その影響を軽くするために、
配管をグニャグニャに曲げて長くするので
一般的な原子炉の10倍以上の設計になる。
そのため、
大地震や津波に対して、非常に弱い。
(自然災害が来なくても配管は壊れたが)
ナトリウム漏れ
試運転中に配管が折れてナトリウムが漏れた。
空気中の水分と反応して火災発生。
福島原発のように、
水をかけて冷却が出来ないため、
火災が起きても何もできない。
指をくわえて見ているしかない。
運転も廃炉もできない状態になった。
配管が折れただけで2兆4000万円がポンコツに……
事故原因の隠ぺいも話題となった。
1日5500万円
(https://www.amazon.co.jpより引用)
プルトニウムの反応が収まるまで、50年……
そこから廃炉の作業が開始できる。
廃炉まで毎年200億円捨てながら維持するしかない。
ちなみに、
日本中の核廃棄物を処理するのに
もんじゅは20基必要だった。
プルトニウム
(Wikimedia Commonsより引用)
自然界には存在しない人工元素。
1gで1000000人(百万人)を死亡させる猛毒。
「地獄の王」プルートゥが語源である。
無害化には10万年かかるので、
未来の人々に負担を押し付けることになる。
爆撃されたら?
原子力発電所を爆撃されたら、
どうなるのか?
ピカドンみたいに大爆発はしないが、
日本中が死の街になる。
核兵器とは比べ物にならないケタ違いの
放射性物質を広範囲に飛散させるからだ。
バラ撒き+タレ流し
水で冷却し続けることで、
核反応が停止も暴走もしない状態(臨界)を
保っている。
福島原発事故のように、
水の冷却がストップしただけで連鎖反応が暴走し、
水蒸気爆発を起こしてしまう。
その後は空中に放射性物質がバラ撒かれ、
海にタレ流し状態になるが、
戦時中なら次のミサイルが飛んでくるだろう。
指をくわえて見ているしかない。
農業が壊滅
日本中の土が汚染されれば、
日本中で農業ができなくなる。
放射性物質が爆撃によって大量に飛散すれば、
日本はもう人が住めない土地になるだろう。
国内大混乱
ヒロシマやナガサキの原子爆弾では、
大きな被害や混乱は爆心地周辺2kmほどだった。
原発爆破の場合、ただちに影響はないとしても、
国内を大混乱に陥れるには、
核兵器を落とすよりも効率がいい。
しかし、
原子力発電所を爆撃されれば、
世界中の空に放射性物質が大量飛散し、
世界中の海にタレ流される。
つまり、
世界のどこかの原発が爆撃されれば、
世界大戦の引き金になるかもしれない。
10万年も管理できるのか?
プルトニウムの毒性が半分になるのに24000年。
無害化するのには10万年。
人類に早すぎる技術である理由が、ここにある。
廃棄物処理問題はまったくの未解決なのだ。
どこの自治体も引き受けてくれないので、
置き場所は先送りにして
原子力発電所で保管している状況だ。
結論は出ていない
(Wikimedia Commonsより引用)
高レベル放射性廃棄物を多重構造の容器に入れて、
地下300m以上深いところに埋めて処分する。
ガラス固化して緩衝剤で覆い、
堅い岩盤の地層に保管するから安全だというが……
その容器は年月とともに腐食する。
容器の厚さは20cmであり、
1000年で3cm腐食するとのこと。
しかし、それはあくまでも予測。
本当に1000年で3cmなのか、誰にもわからない。
この処分方法には賛否両論あり、
現在もこの方法で大丈夫か、誰もわかっていない。
(https://www.sciencefocus.com/より引用)
10万年の間に文明が崩壊するのか、
人類が絶滅するのか、戦争が起こるのか
大災害が1度も来ないのか、
ずっと平和で文明が発展し続けるのか……
誰にもわからない。
本当に必要なのか?
人類が文明生活を始めて、
まだ8000年しかたっていない。
エネルギー自給率7%である日本には、
特にメリットが大きい発電方法とされるが
原子力発電の供給割合はせいぜい20~30%程度だ。
たかが二割三割のために、
生命の危機を感じながら10万年……
それほどの価値があるだろうか?
(Wikimedia Commonsより引用)
そもそも原発賛成・反対以前に、
無駄な電力を使わないスタイルを確立すべきだ。
パチンコ屋1軒で家200軒分の電力消費とか、
バカ過ぎるにもほどがある。
高レベル放射性廃棄物の処理
地層処分、海底投棄、南極投棄、宇宙投棄。
4つの方法が考えられる。
地層処分の技術すら完成してないが、
計画だけは進められている。
しかも、
他の3つの方法ではダメだ。
なぜか?
計画以前の問題
地層処分の技術が完成してない上に、
そもそも地層処分後の安全性すら不明だ。
処分すらできない上に、
処分した後のことはわからない。
でも廃棄物は増え続けている。
原子力は素晴らしい科学技術であるが、
今の人類には早すぎる。
多重バリア
地層処分するには、
ガラス固化させて鋼鉄の容器に入れ、
人工バリアを形成する。
これに安定な岩盤である天然バリアを合わせて、
多重バリアを構成する。
あくまでも予測
キャニスターが腐食・損傷しても
ガラス固化体により流動性は弱い。
万一容器が破損しても、
多重バリアで汚染物質の拡散を
かなり遅らせることができるらしい。
ただし、これらはあくまでも予測に過ぎない。
人工バリアが数百年後どういう状態か、
ガラス固化体によってどのくらい流動性が弱まるか
どのくらい拡散を送らせるか……
具体的な数値は、まったくない。
未来の世代に丸投げ
六ケ所村の平均年収が1400万
であることからもわかるように、
廃棄物の保管にも処理にも
大変なカネがかかる。
そのカネはすべて未来への負債となっている。
現在の建築技術では、
処分場という建物の耐用年数は数百年程度。
その後の耐久性はまったく不明。
もし、活断層で最終処分場が崩壊したら……
もし、最終処分場の近くで大地震が起こったら……
回収など、とうてい不可能だろう。
もちろん、日本だけが気をつけても意味がない。
海外で起こっても世界中に拡散。
途上国も含め世界中の最終処分場で
10万年もの間、完璧な管理ができないと意味ない。
本当に大丈夫だろうか?
自然災害3つ
・上昇してきたマグマと一緒に大噴火
・活断層がズレて露出
・遠い将来、忘れた頃に地下資源と一緒に掘り出し
地震大国ニッポンがこの先、
何百年も何千年も天災も人災も
避けること続けることができるのだろうか。
安定な岩盤といっても、
断層のズレで起こった阪神大震災を
誰が予測できただろうか?
人災2つ
・テロリスト
・核戦争
原子力発電により、
世界中に核燃料や核廃棄物が貯蔵される。
どちらからも核兵器を作ることができる。
核兵器は安全性を考慮する必要がなく、
発電所よりはるかに容易に製造可能である。
テロリストが核兵器を作るために
核廃棄物を盗む可能性は高い。
廃棄物の管理人は単なる会社員であり、
武装などしていないから楽勝である。
また、全世界がいつも平和であるわけがない。
単一民族単一宗教の島国ニッポンと違い、
ヨーロッパなどの大陸は侵略の歴史である。
多民族で多宗教なので争いが絶えない。
侵略されれば、虐殺・略奪・強姦の
3点セットが待っている……
そんなときに
何万発もの核兵器原料を持っている状態だ。
核兵器を製造して「猛」反撃するのは、
当然の流れである。
国の存続
そもそも廃棄物を管理するには、
国が存続していなくては成り立たない。
ローマ帝国は500年、オスマントルコ帝国は600年。
モンゴル帝国にいたっては、たったの85年。
その頃の世界史の地図を見れば、
聞いたこともないような国の名前ばかり。
中国だって何回も国名が変わっている。
国というのは数百年しか続かないのが
普通なのだ。
戦乱の中では、
廃棄物の管理などどうでもよくなるのが
当然の流れである。
日本の位置
日本は環太平洋火山帯にある国。
地殻変動が激しく、地震が多い場所にある。
過去数十万年のデータで安定なら、
今後10万年は大丈夫だろうとの試算である。
単なる統計学的な予測に過ぎない。
地震の影響を受けない場所を確定するのは
現時点では不可能である。
阪神大震災・東日本大震災・津波
南海トラフ・首都直下地震……
これらを想定外と表現する程度の
現在の科学技術の予測が
10万年も通用するはずがない。
3~4万年後の人類なら
より高度な技術を開発しているだろう、
と楽観視しているが
文明が退化している可能性の方も高い。
その頃にはおそらく
人類が絶滅してるから大丈夫ともいえるが……
地層処分
10年かけて総延長100~300kmの穴を掘り、
50年かけて40000本のガラス固化体を埋め、
10年かけて岩盤を安定させたまま埋め戻す計画。
これで高レベル廃棄物の処理は、
原理的には可能らしい。
2020年までの40000本はこれで片付ける方針。
その後のことはまた後で検討。
ただし無人の遠隔操作でなくてはならず、
1本500kgのガラス固化体をとてつもない距離埋める。
そんな技術はまだ存在しないし、
実際に地層処分した国もない。
その技術をこれから開発する予定とのこと。
え?これから??
海底は?
深海の泥の中に埋める方法。
放射性物質を泥が吸着し、
膨大な量の海水が希釈する。
ただし、海底はいまだ謎であり
あまりに不確実である。
メタンハイドレートすら掘れない人類に、
海底を利用することは難しい。
そのため、
高レベル放射性廃棄物の海洋投棄は
ロンドン条約で国際的に禁止されている。
そもそも、海底に廃棄する技術などないが。
ちなみに低レベル放射性廃棄物は
日本でも数十年前まで普通に海に捨てていた。
南極は?
高レベル放射性廃棄物は大変熱く、
自ら発熱し続ける。
自力で氷を溶かしながら
厚さ平均4km以上の氷の底に沈んでいく。
実に合理的だ。
ただし、
南極までの輸送コストが莫大である上に
南極はどこの国の領土でもない。
南極の氷の底がどうなっているか不明なうえ、
温暖化で氷が溶けたらタレ流しになる。
よって、
南極条約で国際的に禁止されている。
宇宙は?
宇宙なら無限に廃棄できるし、
その後の管理も一切不要。
もっとも素晴らしい廃棄場所である。
だが廃棄物を乗せるロケットの打ち上げに
莫大な費用がかかる。
また打ち上げに失敗したり、墜落したら
一瞬で世界中に放射線性物質がブチ撒かれ
目も当てられない状況になる。
テロリストに狙われる危険もある。
定期的に何回も世界中でロケットを
打ち上げなくてはならない。
現在の技術ではまだ打ち上げ失敗の可能性がある。
現に、スペースシャトルは打ち上げすぐに
爆発したことがある。
もしアレに数万発分の放射性廃棄物が
乗っていたら……
大変よいアイデアであるが、
費用面でも技術面でも実現は不可能。
まとめ
数百年後の技術進歩でなんとかしてくれるだろう、
10万年後には人類が絶滅してるから大丈夫……
いろんな見通しがある。
何万年後の子孫は何のメリットも享受していない。
その彼らに負担だけを押し付けるのは
文明人として、許されない行為である。
現時点では核廃棄物の処理方法が
確立されていないので反対せざるを得ない。
いずれにせよ、
今すぐに原子力発電を廃止するのは現実的でない。
50年かけて原子力・火力を縮小していき、
その間に、
クリーンな発電を伸ばしていくしかない。