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【9種類】違い「大麦小麦ライ麦エンバク」用途と特徴、見分け方

どう違うのか?

麦はいずれもイネ科植物であり、
日本人には米の品種の違い程度と感じる。

しかし欧米人には、ナスとピーマンくらい違う。
パン・パスタ・ビール・シリアルなど用途別に
違う植物として認識されている。

大麦は粒のまま、小麦は粉にして使う。

主な用途

  • 二条大麦 ビール・蒸留酒
  • 六条大麦 麦茶・麦メシ・麦ミソ
  • 小麦 パン・麺
  • ライ麦 パン・飼料
  • エン麦 シリアル・飼料

大麦

粒のまま使えるので大昔はメジャーだったが
現在はマイナーな存在になってしまった。

実る列の数が6列(六条種)と
2列の二条種がある。

小麦

いちいち粉にしないと使えないので昔は敬遠された。

“Polish wheat flour (mąka pszenna) on a plate.” by Oliwier Brzezinski.

しかし製粉技術が機械化された現代では
「穀物の王様」の地位まで登り詰めた。

ライ麦

もともと小麦畑の雑草であったが、
繁殖力、生命力が強いので作物に昇格した。

エン麦

もともと家畜用飼料であったが、
シリアルの発明により食用で普及。

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大麦(barley)

昔は主食としてパンや粥にされたが、
現代ではビール・麦茶・味噌・醤油・麦チョコへの
利用にとどまっている。

低温や乾燥に強いので
小麦の生産が困難な地域で栽培される。

二条大麦

“Jecmen_dvourady” by https://www.naturespot.org.uk/species/two-rowed-barley.

実る穂が2列なので「大粒オオムギ」とも呼ばれる。
高級品種なので嗜好品に使われる。

ビール品種

粒が大きくしかも均一なため醸造管理がしやすく、
ビール製造に使われるのでビール麦とも呼ばれる。

ローマ帝国はワインが主流だったものの、
北方のゲルマン人圏は北海道より寒いので
ブドウの栽培が難しく、ビールが主流となった。
それゆえドイツはビールの名産地になった。

また麦の蒸留酒であるウイスキーの主原料でもある。

六条大麦

実る穂が6列あるため種子が小さくなり
「小粒オオムギ」とも呼ばれる。
粒が小さいものの、収量は二条大麦より多い。

“Photo by National Institute of Korean Language

吸水性が高いので押し麦や麦飯に適するが、
日本では麦茶の用途がメインである。
もし小麦で麦メシを作ったら、
吸水率が低すぎてパサパサだろう。

はだか麦

“Korea-Barley-01” by Craig Nagy.

二条大麦・六条大麦ともに
実と皮が糊状物質で固着している。
六条大麦から糊状物質がなくなり、
揉むだけで脱穀できる品種が生まれた。

そのため六条大麦と同じ外観である。

麦茶や麦メシなど六条大麦と同様の
使い方もされているが、
日本では「麦味噌」がメインである。
九州・四国では、
ハダカ麦から麦味噌を盛んに作っている。

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大麦の歴史

大麦はもっとも古くから
栽培されてきた作物の1つである。
中央アジア原産であり、
野生種は1万年以上も前から食用とされ、
8000年前から栽培が開始された。

西には二条種が広まり、東には六条種が広まった。
その流れを汲んでヨーロッパでは二条種、
アジアでは六条種がメインだった。

主食の座から転落

小麦の普及やライ麦の登場により
大麦栽培は衰退していく。

おまけに15世紀ごろにはアメリカ大陸から
ジャガイモが伝来しトドメを刺される。
ジャガイモも寒冷地に強く栽培地が被ったうえに
茹でるだけで味も良く、大麦は激減した。

ビール・ウイスキーに重要

食用としての大麦は激減したが、
ゲルマン人はその後もビールを愛飲し続けた。

その後ドイツ語圏がヨーロッパ最大勢力となり、
そこから世界へ広まった。
いまやビールは世界中で愛飲されており
二条大麦の需要は大きいままだ。

家畜飼料にも重要

馬はエン麦を好むが、牛や羊は大麦を好む。
食用としての需要はほとんど消えたが、
ビール・ウイスキーと並んで飼料用にも
いまだに重要な作物といえる。

日本の大麦史

縄文時代(約1万年前)から食べられていたが、
弥生時代(約2000年前)には米が主流となった。
鎌倉時代(約800年前)には
二毛作の裏作(夏は米、冬は麦)として
ふたたび脚光を浴びる。

しかし明治時代(約120年前)から
白米が普及し一気に衰退する。

明治が転換期

明治以降から米の収量が飛躍的に伸び、
普段から米を食べられるようになる。
主食として大麦の需要が激減すると同時に
用途の広い小麦が大麦を逆転した。

さらにジャガイモの栽培が本格化され、
六条大麦は見向きもされなくなる。
二条大麦はビール原料として需要はあったが、
ほとんど輸入モノになり栽培されなくなった。

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大麦と小麦の違い

昔はそのまま食べやすかった麦が
メジャーな存在であり「大」と表現された。
粉にしないと食べにくい麦は
マイナーな存在であり「小」としていた。

昔は大麦が人気だった

小麦は製粉の手間があるのに対し、
大麦は脱穀が容易で粒のまま麦飯にできる。
白米は江戸時代まで
ご馳走であったり換金作物だった。

そこで栽培も脱穀もしやすい六条大麦が
農村部で麦飯や雑穀飯として食べられた。
大麦は小麦より人気があったために、
上質(=大)な麦⇒大麦と呼ばれた。

見た目の違い

“Barley-vs-Wheat-2” by https://thosefoods.com/barley-vs-wheat/.

パッと見だと似ているが
大麦はヒゲが長く、小麦は短い。

大麦は列が揃っていて粒がハッキリしており、
小麦は粒が揃っていない。

粒の大きさは同じ

小麦と大麦の違いは粒の大小ではない。
(粒の大きさは、それほど変わらない)

品種によっては六条大麦の粒よりも
小麦の粒の方が大きいケースさえある。

↓大麦。

“Barley-vs-Wheat-a” by https://thosefoods.com/barley-vs-wheat/.

↓小麦。

“Barley-vs-Wheat-b” by https://thosefoods.com/barley-vs-wheat/.

小麦は粉にして使う

最大の違いはグルテンの有無である。

大麦はグルテンを含まず加工しにくい反面、
吸水性が高いので麦メシに適する。

グルテンが豊富

小麦粉に水を加えるとグルテンの力で
弾力が生まれ、パンや麺に加工しやすい。
この性質のおかげで、
小麦は「穀物の王様」の地位を得た。

大麦は粒のまま使う

グルテンが少ないので弾力に乏しく膨らまない。
大麦を粉にして麺を作ってもブチブチ切れ、
パンを作ると重くてドッシリする。

使用法が限定されるため、
現在は主に嗜好品や飼料に使われる。
小麦粉はよく見るが「大麦粉」は
ほとんど見たことがないはず。

食物繊維が豊富

“Vegetable pork barley soup with chicken livers and sour cream, by Silar 2010 I” by Silar.

大麦はグルテンを含まない代わりに
白米の18倍もの食物繊維を含む。

食物繊維の摂取量は戦後20g/日だったのが
現代人3g/日と激減しているものの、
できれば6g/日摂取するのが望ましい。

食物繊維は高脂血症や糖尿病を予防する。
健康食品として再び注目され始め、
「麦メシ=貧乏人くさい」というイメージが
改善されつつある。

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大麦を食べる

モチ米(餅)とウルチ米(白米)があるのと同様、
大麦にもモチ麦とウルチ麦がある。

モチ麦は丸麦に、ウルチ麦は押し麦に
加工されることが多い。

モチ麦

“https://cookpad.com/recipe/4255377” by liqueur☆.

20分くらい茹でて食べる。
モチモチ・プチプチした食感が楽しめ、
冷めても食感や味が落ちにくい。

茹で麦を作るならこちら。

丸麦

コンビニのオニギリには丸麦が使われる。
押麦派と丸麦派がいる。

“Irish stew” by charles Haynes.

オレは断然、丸麦派だ。
食感が面白いし、ビールやワインにも合うから
大麦を週末の変化球的なメニューとして使う。
たとえばスーパーでラムチョップが半額だったら、
それでアイリッシュシチューを作る。

ウルチ麦

生産量は多く、モチ麦より値段が安い。
米を炊く時に混ぜるだけで麦メシができる。

麦ご飯を作るならこちら。

押し麦

“https://cookpad.com/recipe/4292655” by Chiang Mai B life.

丸麦を蒸してからローラーで押し潰し、
乾燥させたもの。
こうすると麦粒の吸水性が上がるため、
米と同時に混ぜて炊けるようになる。

麦と米では給水の時間差が大きい。
丸麦で麦ご飯を作るのなら
何時間も浸水させておくか
別で茹で麦にして炊飯後に混ぜるしかない。

米7・押し麦3の割合が食べやすいとされる。
押し麦は吸水量が多いので、水を余分に足す。
(例:押し麦50gなら水100gを追加)

その他の用途

“Aojiru” by JCHaywire.
“Omugiwakaba aojiru” by Worldpeace.

茎を「麦わら」として帽子などを作ったり、
大麦若葉を青汁にして飲んだりする。

小麦の茎は節があって中が空洞なので
創作物には使いにくい。

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小麦(wheat)

パンや麺(パスタ、ラーメン、うどんetc.)など用途が広い。
欧米で製粉化技術が確立すると、
大麦を主食の座から引きずりおろした。

現代ではさまざまな食品や調味料に使われており
小麦を口にしない日はない、とまでされる。

薄力・中力・強力

小麦には10%ほどグルテンが含まれており、
量や型の違いから品種ごとに粘度が違う。

薄力粉はケーキ、中力粉は麺、
強力粉はパンに適している。

薄力粉

“Shortcake 4” by Roozitaa.

グルテンが少ないため、
キメ細かくしっとりしている。
粒子が細かくダマになりやすいので、
ふるいにかけて均一にしないと
ブサイクな仕上がりになりがち。

サクッとした食感を出したい時に適するので
ケーキやクッキー作りでよく使う。
もし薄力粉だけで麺を作ったらプツプツ切れ、
パンを作ったらパンチ力がなく、
冷めた時ゴワゴワになる。

中力粉

“Udon by udono” by Opponent.

別名「うどん粉」とも呼ばれるように、
うどんやラーメンなど麺作りに適している。

お好み焼きやタコ焼きなどの粉モン、
生パスタにも適する。
フランスパンなどのサクサク系パンにも使う。

正確にいうと、麺作りに適する粉というよりは、
日本の気候風土では中力粉までしか栽培できず、
B級グルメの方が中力粉に合わせて進化してきた。

強力粉

グルテンが豊富で粘りと弾力がある。
原料の品種を「パン小麦」と呼ぶだけあって、
パン作りに適している。
パスタ、ピザ生地にも適している。

もし強力粉だけでケーキを作ったらボソボソに、
クッキーを作ったらカチカチになる。

讃岐人「堅いうどんなんて、最低や」
あらゆる小麦粉を輸入できる現代においても
うどんや粉モンがいまだに強力粉に
置き換わっていないのは、興味深い現象だ。

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小麦の歴史

メソポタミア文明(約5000年前)の頃に
ヨーロッパやアフリカに伝わったとされる。

原始時代は大麦が主流だったが、
文明の発達により小麦が主流となった。

立場逆転

“Mushroom Barley Soup (9117161491)” by Cajsa Lilliehook.

収穫の早さ、収量の多さ、脱穀の容易さから
大昔は大麦が主食だった。

ところが文明の成立で「食事の目的」が変化。
生命維持から娯楽へと変化していく過程で
小麦と大麦の立場が逆転していく。

粉にすると旨味が増すうえ、グルテンによって
パンや麺など様々な食品に加工できたからだ。

挽き臼の発明

つき臼で麦を突いて非効率に脱穀している年代は
小麦粉の手間賃が高く高級品であった。

“Photo by Shelley & Dave

挽き臼の発明によって製粉技術が発達し、
さらに風車や水車で機械化がなされると
小麦粉が安くなり庶民の手に届くようになる。

日本でいえば、昔の白米と玄米の関係に似ている。
領主や長者は白米、農民は玄米を日常食としていたが、
精米技術の発達で全員が白米を食べるようになった。

世界へ

“Age of Discovery explorations in English” by Universalis.

大航海時代(16世紀)あたりから
アメリカやオーストラリア大陸に広まる。

18世紀になると栽培技術向上や生産地拡大のほか、
製粉の機械化も進み小麦が食事の中心に。
20世紀では品種改良や化学肥料が発達し、
世界中で大量生産されるようになった。

そして現代では穀物の王として
不動の地位を得ている。

デュラム小麦

(Created by modifying “Triticum durum“)

別名:マカロニ小麦。
タンパク質に富むが粘り気が少ないため、
パスタに適する。

乾燥・高温に適するため、イタリアなど
地中海周辺で積極的に栽培されている。

乾燥パスタの原料

乾燥パスタはデュラム小麦で作られる。
生パスタはパン小麦から作られるので、
デュラム小麦のようなコシがなく、
好みが分かれるところ。

イタリアでは乾燥パスタを
デュラム小麦と水で作ることが
法律で定められている。

小麦のビール

“Photo by swanksalot

小麦のビールはホワイトビールと呼ばれ、
ヴァイツェンなどが有名だ。

大麦のビールよりも甘くフルーティ。
普段と違うビールを飲みたい人や
ビールが苦手という層に需要がある。
ただし、大麦ビールほどのパンチ力はないので
ビール慣れしている人には物足りないかも。

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日本の小麦史

弥生時代(約2000年前)に中国から伝わる。
奈良時代(約1300年前)には五穀の1つとされたが、
粉にして食べる小麦は敬遠されており
粒のまま食べられる大麦が好まれた。

当時の日本にはまだ挽き臼が普及しておらず
あいかわらず脱穀に手間がかかる状態であり、
小麦の用途は家畜飼料がメインであった。

江戸時代が転換期

“Photo by katorisi

それまで餅つきの臼しかなかったが
江戸時代になると挽き臼が普及しはじめ、
小麦の製粉が容易になっていく。

“जाँतो” by Janak Bhatta.

塩と水で練った麺(饂飩)にして食べたので
小麦粉は「うどん粉」とも呼ばれた。
とはいえ、
江戸時代はまだまだ消費量は少なかった。

明治時代に急増

パン・スパゲッティ・カツレツ・コロッケ……

明治時代には欧米から
様々な小麦粉料理が伝わると消費が急増。
西洋料理店も登場し、洋食が脚光を浴びた。

戦後に爆発的普及

“Photo by Chidorian from Kamakura City, Japan

アメリカで小麦が余ったので
日本の学校給食に無償提供し始めた。
団塊世代は子どもの頃に学校でパンや麺の味を覚え、
その習慣は団塊ジュニアに受け継がれた。
Americanな粉として「メリケン粉」とも呼ぶ。

さらに東京五輪がキッカケとなって
全国の隅々まで洋食が広まった。

こうして小麦は日本において
米と双璧をなす存在にまで登り詰めた。

生産

小麦は温帯~亜寒帯で生産される。
パン用品種(強力粉)は多雨に弱いので
日本ではうどん用品種(中力粉)がメインである。

日本においては全国で栽培可能であるが、
梅雨によって品質や収量に甚大な影響がある。
米には恵みの雨でも、小麦には邪魔者……
収穫前に水分を得て発芽すると値崩れするので、
梅雨のない北海道が適している。

ちなみにオーストラリアは小麦栽培に適した気候であり、
讃岐うどんはオーストラリア産小麦粉で作られる。

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ライ麦(rye)

別名:黒麦(クロムギ)。

低温や乾燥、酸性土壌に強く
痩せた土地でも育つので
小麦の生産が困難な東欧・北欧がメインである。

歴史

コーカサス・トルコ原産といわれ、
5000年前に北欧で栽培が始まったらしい。
大麦やエン麦とちがって
小麦と同様に食用メインである。

もともと雑草

“Photo by LSDSL

小麦畑の雑草であったが
姿が似ているので除草を免れた。
そこから繁殖してさらに小麦に似た個体が残され……
を繰り返して小麦そっくりに進化した。

劣悪な環境の畑では、小麦を押しのけて
作物として栽培化されるようにまでなった。

17世紀は拡大

“Photo by Agronom

ライ麦は小麦よりも食味に劣るため、
ローマ帝国では貧困者の食べ物であった。
いっぽう寒冷地では小麦畑をライ麦が覆うようになり、
ライ麦が主要穀物となっていく。

中世ヨーロッパ(17世紀頃)では大麦を抜いて
小麦に次ぐ第二の穀物になった。
寒冷地では、雑草から主食にまで成り上がった。

18世紀に衰退

農業技術の発達や経済成長、生産拡大により
食味に勝る小麦の供給量が急伸すると、
ライ麦の生産は半分以下まで落ち込んでいった。

ただしビタミン、ミネラル、食物繊維など、
食味より健康面を重視する現代人も多いので、
生産量が少ないライ麦パンの方が値段が高い傾向にある。

黒パン

“Photo by Rainer Zenz

ライ麦パンは「黒パン」とも呼ばれる。
サワー種と呼ばれる菌で乳酸発酵するので
酸味が強く、ロシアでは非常に好まれる。

小麦パンは酸味が弱く柔らかいのに対し、
ライ麦パンは酸味が強くて堅い。
黒パンは苦手な人も多い反面
「ライ麦パン大好き!」な人もいる。

ちなみにライ麦は黒ビールの原料ではない
大麦の麦芽を焙煎してから作るので
コーヒーのような色になっているのであり、
ライ麦の黒ではない。

日本ではマイナー

“thumb-barley-rye-wheat” by https://permies.com/t/118917/difference-barley-rye-wheat.

もともとアジアに存在しなかったライ麦は、
19世紀ころに日本まで伝わってきた。
日本列島は寒冷地でも痩せた土地でもなく、
米を作れる環境なので、ライ麦の需要がなかった。

20世紀になってもライ麦は普及せず。
大麦の後には、小麦がすぐ拡大したからである。

わずかな需要

耐寒性・成長の早さ・丈の高さ・根の深さから
防風・砂防用植物でわずかに利用されている。

早春に収穫できる上に得られる草の量が多いので
青刈り飼料に適している……が、
大麦と違ってマズいらしく牛が好まない。

食用としてもわずかな需要はあるとはいえ
日本の場合は、ほぼ全量が輸入である。

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エン麦(Oat)

日本では「エンバク」、
英語ではオート麦、オーツ麦などと呼ばれる。
他の麦は「むぎ」と読むのに対し、
エン麦だけ「ばく」と読む。

エン麦は「飼料用」というイメージだが、
オートミールの発明で脚光を浴びた。

歴史

地中海~中央アジア原産であり、
5000年前に作物化された。
19世紀までは馬の飼料用途がメインであった。

膨らまないのでパンには向かない。

温暖地では家畜用

“Photo by BLW

馬はエン麦を好んで食べる。

小麦が採れるローマ帝国では家畜飼料だったが、
寒さが厳しい北欧では人間の食用であった。

ライ麦よりさらに厳しい環境でも育つので
北欧やスコットランドなど高緯度地帯で
積極的に生産される。

寒冷地では人間用

“Photo by H. Zell

北欧やスコットランドなどの寒冷地では
小麦・ライ麦は高級品であった。
そのため安価なエン麦が主食であり
パンではなく粥として食べられていた。

その北欧でもジャガイモ伝来によって
エンバクは主食の座から降りることになる。
さらに物流の発達で小麦・ライ麦が
より安く輸入できるようになり、
ますます需要は減っていった。

イヤミ

イングランドの詩人
「エンバクは穀物の一種である」
「イングランドでは馬を養う」
「スコットランドでは人を養う」

イギリス人独特の皮肉を込めた定義をしたので
スコットランド人が激怒した。

生産は減少傾向

エン麦の80%は馬の飼料である。

とはいえ車やトラックの普及により、
輸送用家畜であった馬の需要が急減。
生産は減少傾向とはいえ、
オートミールとして一定の需要がある。

小麦、米、トウモロコシ、大麦、キビに次いで
6番目に生産量が多い。

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オートミール

19世紀に入ると品種改良がなされ、
さらにフレーク化することで
「押麦(オートミール)」として流通した。

この技術で手軽に食べられるようになり、
食用として普及するようになる。

シリアルの誕生

Photo credit: wuestenigel

エンバクを脱穀したものであり、
軽く煮ると容易に粥状になる。
現代でも朝食シリアルとして利用される。

ちなみに初のシリアル食品を普及させた会社の
社長が「ウィリアム・ケロッグ」である。

押し麦との違い

押し麦(大麦)は
20~30分加熱しないと火が通らないのに対し、
オートミール(エン麦)は2~3分で火が通る。

かかる手間がケタ違いであり、
押し麦はオートミールの代用にならない。

健康食品で人気

オートミールは栄養面も優れている。

精白した麦と違い「全粒穀物」であるため、
押麦よりもビタミン・ミネラル・食物繊維などが豊富である。
(玄米と白米の関係と同じ)

ナッツやドライフルーツを加えたグラノーラなどが
健康食品ブームに乗って人気が高まった。
外皮のみをシリアル化したオートブランは
水溶性食物繊維が豊富であり、
「ウンコがバフバフになる」と女性に人気である。

ネコ草

エン麦はネコの健康食品でもある。
10cm程度生育した新芽が「猫草」として
ペットショップやホームセンターで売られている。

……が、我が家の猫は見向きもしなかった。

日本では?

日本には明治初期(19世紀後半)に
北海道で栽培された。

第二次世界大戦までは軍馬や輸送用で
馬の飼料として需要があったものの、
戦後は自動車の普及で需要が激減している。

とはいえ馬がもっとも好む飼料であり、
競馬や馬肉、馬術などに重要な作物である。

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その他

その他に麦にまつわる言葉では、
ハト麦やグルテンフリーなどを聞く。
また世界の穀物生産量を示す。

ハト麦(Job’s tears)

“Photo by 대전광역시 공식블로그

日本では「ハト麦茶」で広く知られる。
生薬では「ヨクイニン」として、
アジアでは主食に雑穀として混ぜて食べられる。

小麦その他はイネ科〇〇ムギ属であるのに対し、
ハト麦だけはイネ科ジュズダマ属であり、
麦よりむしろトウモロコシに近い。

六条麦茶はコク、ハト麦茶は香ばしさが特徴であり、
どちらもノンカフェイン飲料として
消費は右肩上がりである。

グルテンフリー

“Photo by Heinz Terholsen

小麦アレルギーでない人が高いお金を出して
グルテンフリーな食材を選んでも意味がない。

小麦アレルギー

原因はグルテンであるが、
大麦、ライ麦にもグルテン類似物質があるので
避けないといけない可能性がある。

エン麦(オーツ麦)はグルテンを含まないが、
小麦と同じ工場で商品化されがちなので
避けないといけない可能性がある。

にもかかわらず、
アレルギー表示は小麦だけなのでややこしい。

グルテンフリーダイエット

もともとグルテンアレルギーを改善する目的だったが、
欧米の有名人が体質改善を図ったので注目された。

この流れでグルテンをほとんど含まない大麦が
ダイエットや健康食として注目され始めた。
実態は小麦由来製品を避けるだけなので、
単なる「欧米版糖質制限ダイエット」ともいえる。

米や大麦がグルテンを含まないからといって
いくらグルテンフリーを頑張っても、
それらをたくさん食べればブタ化してしまう。

世界の生産量(億t)

1位 トウモロコシ(8.5)
2位 米(6.7)
3位 小麦(6.2)


4位 大麦(1.2)・5位 モロコシ(0.5)
6位 雑穀(0.3)・7位 エン麦(0.2)

3大穀物(1~3位)が他を大きく上回る。

欧米では区別される

日本では〇〇麦と一括りにされるが
英語では日本語の「麦」にあたる総称がない。

barley(大麦)、wheat(小麦)、
rye(ライ麦)、oats(エン麦)と、
別々の植物として扱われる。

まとめ

もっと小麦を輸入シロ

昔は小麦が大麦よりもマイナーだったが、
現代は「穀物の王様」になった。
それは玄米と白米の関係に似ており、
文明化・機械化が進むほど
味重視になっていった結果である。

エン麦は馬のエサとして重要だが
シリアルとして人間のエサにもなれた。

ライ麦はパン専門店の黒パンくらいしか
目にする機会はない。
本格的なライ麦パンを扱う店は少数派なので
ライ麦と聞いて「??」となるのは当然である。

ドイツ人のように手巻き寿司感覚で
ハムやチーズ、スモークサーモンなどを
黒パンに乗せながら食べるのもいい。
重いパンなので、重いワインによく合う。



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